河童、再び
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久しぶりに河童から連絡があったのは、
今日の夕方をちょっと過ぎたころだった。
わたしは遅めの昼食を終えて
ほっと一息お茶でも点てようかと準備をしているところに、
電話がかかってきたのだ。
タイミングの悪い奴というのは必ず
どのグループにも一人はいるもので、
わたしたちのグループの中では河童がそれだった。
どうせろくな話でもなかろうと無視を決め込んでいたのだが、
やたらとわずらわしく何度もかけてくるので、
ゆっくりお茶を飲むこともままならず、しかたなく電話に出た。
「あら、どうしたの?」
それが奴の第一声だった。自分からかけておいて
あら、どうしたの?はないものだ。
無視して電話を切ろうとすると、それを察したのか
「それがさあ、実はね」
と切り出してきた。ますます憎たらしい。
「こないだは悪かったね。わざわざ来てもらって」
河童の進路の相談を受けるために出かけたときのことか。
「こないだのお礼がしたいんだけどさ、今度時間ある?」
お礼と言われても、わたしはたいしたことはしていないはずだ。
泣きすがってきた河童に、
「知らん」
と一言冷たく吐き捨てただけだった。
お礼をされる言われはない。そう伝えると、
「いや、いいんだよ。あれで目が覚めたんだ。あれでよかったんだよ」
何がどうよかったのか知らないが、河童ごときに何ができるというのか。
「いい鮪が手に入ってさあ、それで鮪パーティーをやろうと思うんだ」
鮪パーティー?どんなパーティーだ。
お礼をされるわたしでも、お礼をする河童でもなく、
どこからか手に入った鮪が主役のパーティーか。
胡散臭いこと山の如し、何か陰謀の臭いすらする。
やはりこれは何かの罠なのだろうか。
冷めたお茶に救いを求めてみたが、
緑色の抹茶が河童の顔に見えて、すぐに流しに捨てた。
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