やわらかいパンダの宝箱
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 こんな夢を見た。
 わたしが宇宙人にさらわれたのは地球時間でちょうど2時間ほど前のことだった。
 宇宙人にさらわれることなどもちろん初めてだったのでわたしは緊張した面持ちでベッドの上で縛られていた。
 彼らは地球人の足りない知識でも理解できる姿でわたしに接してくれた。言葉もきちんと日本語を使っていてくれて非常にやりやすい。
「ねえ、ぼうやいくつ?わかいのね〜。つやつやのはだ、ひきしまったきんにく、このみだわ〜。なまえは?…そう、いいなまえだわ、このみだわ〜。 そういうの。どう?しばられたかんじは。いいでしょ?わたしごのみ。あじごのみ。うふっ。いや〜だ、そんなこえだされるとおにいさんぞくぞくっときちゃうじゃな〜い」
 彼はわたしの上着を脱がし、その少し湿り気のあるシャツを胸に抱きながら、在りし日の母の姿を思い浮かべては一人、涙するのであった。
「おっかさん、おらひもじい。もうびんぼうはいやだ。おらとうきょうさいってはたらくからだ。かねさもうけてうまのりまわすだ」 「ばかいうんでねー。びんぼうのどこがわるいだ。おっかあもおっとうも、おめーよりくろうさしてるだのに。あまえるんでねえ」 「ごめんよ。おっかあがやくただずのためにふたりにひもじいおもいをさせて」 「おっかあ、さけだ。さけもってこい。ほんじつはかーにばるだ〜えへえへ」 「これはひどいかていですねーそれではかぞくけんきゅうかのすぱんこーるはまぐちさんのいけんをうかがいたいとおもいます。いかがでしょう?」 「このくちじゅうにひろがるまったりとしたあまみ、そのあまみにはくしゃをかけるようなぱんちのあるのどごし、いかがでしょうか」 「いまならジョン・マルガリータもつけてのごほうし」 「これであなたもジュリエッタ」
 2時間もの間、わたしは彼らに何をされていたのだろうか。入り混じる記憶の中、今日もわたしは街をさすらう。
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