素敵な象の冷蔵庫
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 こんな夢を見た。
 ガチャピンの群れの中をじゃじゃ丸と駆け落ちした二十一代目お姉さん「ジョリエッタ」を探してサリーと呼ばれているわたしは歩いている。
 背広を着たガチャピン。女子高生風のガチャピン。ボディコンを着たガチャピン。英語を話すガチャピン。中国語を話すガチャピン。七カ国語を話すガチャピン。八百屋の店先に置かれたガチャピンをまけてくれるようおやじガチャピンに交渉する主婦ガチャピンのスカートの裾を引っ張る子供ガチャピンにからんでくるダックスフンドーガチャピンに小便をかけられている電柱ガチャピンを修理する工事夫ガチャピンの帰りを待って秋刀魚ガチャピンを焼きながら写真を見つめる色気漂う新妻ガチャピンを想像していけない気分になっているわたしガチャピン。
 実に素敵な昼下がりだ。
 街の中央に十年前に立てられたビルの側面の巨大スクリーンにサーフィンをする色黒の爽やかなガチャピンが姿を現す度に、街の女の子ガチャピンたちが黄色い声を上げる。その声は皆同じガチャピンの声だ。
 ラーメン屋ののれんの影からムックが恋しそうにガチャピンの群れを見ている。ムックの群れもいいかもしれない。
 わたしはベンチに座っている。隣にOLガチャピンが顔を赤らめて恥ずかしそうに座っている。
「わたし、お腹に時計を飼っているの。ほら、聴いて。聴こえるでしょ」
「……」
「この子は知らない箱から知らない箱へと旅をしている途中なの」
「……」
「鼓動が聴こえるでしょ」
 しばらくぼうっとしていると、「ぐー……」とフランス人の声がした。
「ジョン、ジョン・マルガリータなのか?」
OLガチャピンの腹に問いかけているわたしの耳元で、OLガチャピンが不敵な笑みを浮かべている。
「ぐー……」
ジョン・マルガリータ、わたしが二年前に生き別れた愛しの不死鳥伝説。
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